好奇心は猫を殺すか?
第三回 ペルソナ(前編)
「ペルソナ」という語は、いろいろなところに出てきて、色々な使い方をされている。 今回このコラムで扱う「ペルソナ」とは「コンピュータは難しすぎて使えない」というタイトルの本に登場する開発手法のことであり、その「ペルソナ」の概念はあながちTRPGとは無関係でもないので、このコラムではその話を中心に進めていく。
この本、タイトルだけから内容を想像すると、“今までパソコンを触ったこともないズブの初心者が、一念発起で購入から始まっていって、周囲の人々の協力を迷惑を受けながら、うまく動かなかったり動いたりまた動かなかったり、そんなハプニングの悲喜交々を面白おかしく書いたパソコン雑誌の連載記事の単行本化”、かと思うかもしれないが内容は全然関係ない。
タイトルから受ける印象に反して、パソコン初心者が読むような本ではなく、むしろムチャクチャ開発者サイドの本であり、だからはっきりいって今回はお勧めなどしない。勘違いして買わないように。
さて、この本の内容を要約すると、「コンピュータが使いにくいのは、作ってる人がオタクだから」という身もフタもないものになる。
では、コンピュータを使いやすいものにするにはどうすればいいのか?
オタクに作らせない?まーたしかにそれも一つの道ではあるかもしれないが、しかし製造と名のつくほとんどの分野においてオタクを排除するとおよそ研究開発は成り立たないだろう。
そもそも性格がオタクかどうかにかかわらず、その道その分野でプロを自認する人々にとって常に陥りやすい”罠”がある。
それを回避するのが「ペルソナ」手法である。じゃぁ、上の本を読めば「ペルソナ」とやらが理解できるのかというと、それはまったくの間違いではないが、読めば使いこなせるようになるかというと、それはまったく間違いで、訳者あとがきでも「ようするに筆者の会社を雇えとしか読めない」と揶揄させている所以でもある。
おおよそ世に出ている商品にはターゲットというものが存在する。
ここで我が拙作“龍街夜城”を例にターゲットを考えてみると、「格闘ゲーム経験者で、香港映画に限らずアクション映画が分かっていて、ロールプレイ部分とゲーム部分との好みは半々くらいのバランスで、TRPG経験は中級者以上」となる(あくまでメインとして考えているターゲットなので、それに当てはまらない人が遊んでもらっても全然問題ないんだけどね)。
以前、ある雑誌に載っていた“アルシャード”の紹介文を読んでいたときのこと、“TRPGシステムも商品である以上、ターゲットというものがあり、ターゲットが明確でないために失敗したシステムも少なくない”というようなことが書かれていて、(いいこと言うなぁ)とそのときは思った。
その次の段で“アルシャードのターゲットは「TRPGを愛する全ての人たち」”とあり、(ようするにTRPGやってる人全員ってことでしょ、全然絞れてないじゃん)と思った、そのときは。
まぁ、このコラムを書いている時点では、アルシャードを読んでもなければプレイもしてないので、これ以上余計なことを書くのは止めよう。
(ちなみに、前回にも書いたが、このコラムに出てくる情報は、その正確さを保証していない。この記事がどの号のどこに書かれていたことなのか覚えてないし、そもそも雑誌が手元にないのだから確認のしようがない。)
ターゲットはないよりあったほうがいいとはいえ、ターゲットが明確であれば無問題、とはいうわけにはいかない。
商品の機能に対してターゲット設定が適切でなかったり、適切であってもターゲットのニーズを汲み取れなかったり、理由は色々あるだろうがターゲット設定に失敗した例は色々ある。
「電動毛玉取り器」というものがある。
これを商品化するときに、主婦層をターゲットにした宣言戦略を行っていったそうだ。セーターに限らず服を修繕したり管理するのは専ら主婦の手によって行われている、その思考は何も間違ってないように見える。
しかし実際には一番多い購買層は男子の大学生だという。
セーターの毛玉の処理は、毛玉取り機を使うより手作業でやったほうがよっぽどか上手くできる。もちろん、手間が軽減されるというメリットはあるとはいえ、短縮された時間も大した量じゃない。働く主婦という設定ならともかく、普通の主婦ならそこそこの時間をかけて手作業で行うもので、毛玉取り機を使う人というのは「毛玉がついたまま着ていくほど無粋でもないが、時間もなく器用でもない人」となり、これに男子学生が当てはまる。時間も金もない学生だったら、毛玉がついたまま着ていくもの何も不思議でないような気もするが、男子学生もだんだんオシャレになっていることだし、「気にはしているが、器用さもない」という点で毛玉取り機が買われていくのだろう。
ちなみに、毛玉取り器は電気髭剃りの応用を考えて生み出された商品であって、ターゲットを決めてから開発された商品ではないので、開発の失敗というより宣伝の失敗と言える。毛玉取り器はピンク色で丸みを帯びた形状が多いが、それも主婦層をターゲットにした結果なのだろう。
(この話もあいかわらずどこで読んだ内容なのか良く覚えていない)
ちっとも本題に入らないままあいかわらずどうでもいい話が続くが、後編では本題に入って、さらにどうでもいい話が続く(後編へ続く)。