TRPG世界論


 小説であれTRPGであれ現実であれおおよそ世界というものは『世界設定』と『世界観』によって構成される。本テキストはTRPGユーザー向けに書かれたものであり、その論を述べることにより、読者がよりよ良い世界認識に目覚めることを目的としたものである。

定義1・『世界設定』
 その世界で客観的に存在するもの。世界の住人が行動するにあたり、その制限や判断材料となるもの。世界設定が綿密であればあるほど、世界に説得力が生まれる。
 例・『刑事魂!!』の場合。昭和50年代当時の日本によく似た「右曲市」という架空の都市。

定義2・『世界観』
 あなたがいだくその世界に対する主観的イメージ。そのものが実在しているいないは問われない。雰囲気のようなもの。この世界観が明確であればあるほどTRPGの場合は目的がはっきりする。
 例・『刑事魂!!』の場合。『西部警察』のような刑事ドラマ

 世界をデザインする上でもっとも難しいのは、その世界を設定する『世界設定』の部分である。なぜなら、その世界にリアリティーをもたらすには世界の住人が日常的に生活をおくるのに必要な程度の設定をしなければならないからである。朝起きて夜寝るまで、一人の人間が関わるものごとの全てを設定するのは非常に困難なことである。しかし、それを怠っていては真に世界を設定したとはいえないのである。よく分からないという人は、映像作品として考えてみるといい。ある特定の人物の一日をカメラで追った場合、どれだけのものがレンズに写るのかを。少なくとも、現実の人間をカメラで付回せば現実に存在するものの多くが映像として取り込まれる。我々は映像としてとりこまれるそれら存在に囲まれて存在しているのであり、それらの存在をなくしてしまってはリアルな世界であるとはいえないのである。
 しかし、実際問題として全てを設定するのは不可能である。よってTRPGの『世界設定』を考えた場合、少なくともゲームの内に登場するもの、あるいは関わると予期されるものについては設定をつくっておく必要がある。例えば舞台となる街があったとすれば、街並みはどのようであるか、どのような人々が住んでいるか、どのように生活しているか、それらを根拠にもとづいて配置しておく必要がある。その根拠こそがリアリティーなのだから。
 一方『世界観』はどうか。これは『世界設定』にくらべ単純である。しかし単純である分、そのベクトルを定めておかないと誤解を与えゲームを崩壊させるおそれがある。『世界観』とはあくまでイメージにすぎない。だがTRPGというのはイメージの産物であり多くの人間は個人の『世界観』にそって作者の意図とは無関係に『世界設定』を生み出してしまうものなのだ。そして、生み出された『世界設定』は作者の認識範囲にない。それゆえに暴走してしても止めることができないのである。この傾向は現在の現実世界から遠い世界であればあるほど大きい。例えば「『世界観』はファンタジーです」と言った場合どんな世界を描くだろう。ある人は『スレイヤーズ』であろうしある人は『ロードス島戦記』かもしれない。『フォーチュンクエスト』を思い浮かべる人もいるし『指輪物語』や『コナン・シリーズ』を思い浮かべる人もいるだろう。そして、その『世界観』でゲームを理解し、その『世界設定』をゲームに持ち込んでしまうのである。
 それを食い止めるにはどうしたらよいか。残念ながら方法は綿密な『世界設定』を構築し、それをユーザーに示すしかない。これはとても手間のいる話であるがしかたがないのである。しかし、本当に面白いTRPGとは重厚な『世界設定』を持った場合であることが多い。もっとも、簡単に遊べてそれなりに面白いTRPGをプレイヤーが求めるのであればどうしようもないが。だが、少なくともTRPGをオリジナルで創ろうと志すのであれば、プレイヤーが知りたくなるような、少なくとも作者自身が興味を持てる『世界設定』を目指すべきであると思う。そして、プレイヤーも本当にTRPGを楽しみたいのであれば『世界設定』についてルールブックに書かれている事柄ぐらいは知っておく必要があるのである。
…論というより意見になった(笑)